普段何気なく使っている紙袋。その一つ、底が六角形になった「亀甲袋」には、明治から昭和にかけての日本の暮らしが詰まっています。これはただの袋ではありません。そこには、たくましい知恵と、物を大切にする心、そして少しの工夫が隠されています。

昔懐かしい「メリケン粉」の正体
「メリケン粉」と聞いて、ピンとくる方は少ないかもしれません。これは、かつてアメリカから輸入されていた小麦粉のことです。英語の「American」が訛って「メリケン」と呼ばれました。
丈夫なクラフト紙に包まれて海を渡ってきたメリケン粉袋は、中身を使い終わっても決して捨てられることはありませんでした。当時の人々にとっては、貴重な資源だったからです。

一つの袋から生まれた、二つの価値
1. 究極のDIY「小麦粉糊」
当時は、市販の接着剤は高価で手に入りにくく、身近なもので代用されていました。そこで使われたのが、メリケン粉そのものを水で溶かし、煮て作った「小麦粉糊」。このシンプルな糊が、袋の再生に欠かせない接着剤となりました。
2. 生まれ変わった「亀甲袋」
使い終わったメリケン粉袋を解体し、小麦粉糊で何枚も貼り合わせる。そうして、底を亀の甲羅のような六角形に成形し、丈夫で自立しやすい新たな紙袋が誕生しました。この形が、今も私たちが知る「亀甲袋」の原型となったのです。
単なる紙袋ではない、日本人の魂
亀甲袋は、ただの便利な道具ではありません。そこには、モノを大切に使いきる「もったいない精神」と、身近なもので工夫を凝らす「DIYの知恵」が詰まっています。
あなたの手元にある亀甲袋は、先人たちの暮らしの知恵と、心意気を今に伝えるタイムカプセルなのです。
この物語を知って、あなたも身の回りのモノに少しだけ、優しいまなざしを向けてみませんか?